『家づくりの本』スペシャルインタビュー
リノベエステイト 松山真介さんに聞いた
『住まいも家族も〝変化〞を楽しむことから始めよう』
リノベエステイト代表の松山真介さんは、
時代を先読みし、これからの暮らし方を見据えた家づくりを
提案してきた福岡リノベーション界のパイオニア。
その松山さんが考える、これからの暮らしと住まいとは。
リノベエステイト
株式会社 アポロ計画
代表取締役社長
松山 真介さん
1968年北九州市出身。九州芸術工科大学卒業。一級建築士。2000 年に「モノづくり・ウワサづくり・売上づくりのデザイン」を理念に掲げたクリエイティブカンパニー「アポロ計画」を設立。中古建築の再生に特化した事業部「リノベエステイト」代表として数々のリノベーションを施工。一般社団法人リノベーション住宅推進協議会九州部会長
都市を私物化すれば
暮らしはもっと楽しくなる。
昭和の時代は、「家は一生に一度の買い物」と言われていた。しかし、ここ20年で家や建物に対する見方や価値観は少しずつ変化。そして未知のウイルスとの遭遇によって、その変革は爆速的に進んでいる。第一線でリノベーション事業に携わってきた松山さんもそれを強く感じ、以前から提唱していた「家族構成や年齢、ライフスタイルに合わせて自由に住まい方を変えること」が、今後は当たり前の時代になると確信している。
「私が事業を始めた2000年当時はリノベーションという言葉も認知されておらず、住宅ローンを申請してもほぼ通りませんでした。リノベーションを依頼するのは、お金に余裕があって、人と同じ家には住みたくないと考える独自性を大切にする方たちがほとんどでした。今は新築とリノベーションが同等に比較されるほど、一つの選択肢としての地位を確立していますし、ニューノーマル時代には働く場所からの開放や本業だけではない自由な働き方など、これまでの常識に囚われない生活が待っています。そうなった時、今の家でそれが実現できるのか。家に生活を合わせていないかをチェックしなければいけません」。
松山さんが提唱するのは、都市を〝私物化〞するということ。具体的にいうと、趣味や仕事の場所を全て家の中に設けるのではなく、一部を〝外付け〞にするということだ。最近はリモートワークが普及しているため、家の中にワークスペースを造る人が増えているが、レンタルオフィスやホテルを借りることも同じように検討してみることが大事なのだ。自動車も自転車もシェアする今の時代、家の中に詰め込まず、少しの余裕と不自由さを楽しもう。そして、生活や年齢によって、一度構築した家に不自由さを感じはじめたら、躊躇うことなくアップデートすることも検討してみよう。
たった一つの建物から
街にイノベーションを起こす。
■BEFORE
松山さんが2010 年に購入した1964 年完成の4階建て(屋上付き)の鉄筋構造のビル。廃墟のような佇まいに、周囲は購入を反対したほどだった
▼FULL RENOVATION
■AFTER
フルリノベーションで外観も屋内も見違えるほどに生まれ変わった。シェアオフィスにはクリエイターが同居し、同居者同士の仕事も生まれている
大学在学中に西洋建築や欧州の建築の歴史を学び、卒業後パリやロンドンで築100年以上の建物がリノベーションを繰り返しながら、受け継がれていることに感動したという松山さん。「日本もいずれはこうなるし、こうなるべきだ」と確信し、「リノベーションを文化にしたい。流行り廃りを超越した、心地良い暮らし方を提案したい」と、いち早くリノベーション事業を立ち上げた。そのため、松山さんのリノベーションは、古きを新しきに変えるという単純な作業に終始せず、新たな価値を与え、今ある風景をアップデートするという付加価値が付け加えられている。
その代表作が、自社ビルの「BLDG64」だ。2010年に築46年の廃墟化した4階建てのビルを購入し、フルリノベーション。1階にテナント、3・4階にシェアオフィスを含むワークスペースを設け、2階の事務所兼ミーティングスペースは、現在レンタルスペースとしても活用されている。1階のテナントには約5 年前から「TTOAHISU」が入店。山下シェフと松山さんが一緒に空間をデザインし、今や予約が取れない福岡を代表するフレンチと呼ばれるようになった。この「TTOAHISU」の人気によって、ビルのある大手門には多様な店が増殖中。松山さんはこの20年を振り返り「点だったものが線になり、面になっていく過程を、10年間かけて大手門で見られた気がしますね。一つの物件からイノベーションが起こる可能性はあるし、私はお客様と一緒に新しい暮らし方の社会実験をしているようなもの。時代に合った家や建物の在り方をこれからも模索していきたいと思います」と話している。
RENOVESTATE OFFICE
2階のミーティングスペースは、過去の施工事例を紹介するギャラリーの役目も果たす
TTOAHISU
日本のフレンチをテーマにした「TTOAHISU」。土地柄を反映させた斬新な空間美が、一層料理を美味しくさせる
その住宅は、10年後も
本当に快適ですか?
リノベエステイトの仕事は、マンションなどの住宅、オフィス、ショップ、スタジオ、サウナなど多岐にわたる。その中でも住宅は、上質な大人の暮らしを好む世代に支持され、唯一無二の工務店として絶対的な地位を確立している。
注目したいのは、リノベエステイトが手がけた家は、おしゃれなだけではないということ。築年数が経っているマンションや戸建てには、ほぼ100%内窓をつけるなど、断熱改修をして低燃費で暮らせるようアップデートしている。松山さんは「断熱改修を施すと施工費が上がるため、お金が高くなったことばかりに目が行きがちです。しかし、断熱改修をすれば、日々の光熱費は確実に下がります。
10年先を見据えた時に、どちらの方が得で快適か。住んだ後のことまで目を向けて決断しませんか、という話を必ずするようにしていますね」と、入居後の暮らしに配慮した提案を心がけている。それと同時に「賢く住む方法」を伝え、家づくりに使うお金が浪費にならないようにアドバイスを送っている。つまり、お金をかけた方がいいところと、かけなくても豊かな暮らしができる方法の両方にコミットすることで、満足度の高さを実現しているのだ。
世界がSDGs(持続可能な開発目標)に取り組む中、一個人の家づくりにも、循環型やカーボンニュートラルという概念を持って考えることが重要になってきた。それをともに叶えられる施工会社であるかどうかも、工務店を選ぶ時の大事なポイントになってくるだろう。住宅や暮らし方の概念が大きく変わりつつある今、家族でもこれからの暮らし方や大事にしたいことを話し合ってみよう。
|リノベエステイト施工事例
|1.福岡市城南区 M邸
北欧の照明がLDKをオシャレに彩る50代夫婦のマンションリノベ。
|2.福岡市南区 N 邸
大人の一人暮らしの教科書的空間、ヴィンテージマンション。
|3.福岡市中央区 M 邸
愛猫との暮らしに配慮した大判タイル仕上げがスタイリッシュなマンションリノベ。
|4.福岡市東区 K邸
間仕切りを取っ払った一体型LDKが魅力的。築28年のマンションをリノベ。
|5.福岡市早良区 K 邸
ルーフバルコニー付き最上階の部屋を、子どもも快適に過ごせるようにアップデート。
|6.福岡市中央区 H 邸
靴をギャラリーのように魅せた収納が画期的。ヤングファミリーのお宅
リノベエステイトが
YouTube チャンネル開設!
ホームページでは写真で施工事例を紹介しているが、動画を見ながら、よりリアルな雰囲気を実感してもらうため、YouTubeチャンネルを開設した。相談前に要チェック!
|リノベエステイトYOUTUBEチャンネル
https://www.youtube.com/channel/UC5E8hyEkMmGE5XFDMht43Ug
取材協力/ 『リノベエステイト 株式会社アポロ計画』
福岡市中央区大手門3-12-12 BLDG64 201
TEL 092-738-9099
https://re-estate.net/