『家づくりの本』スペシャルインタビュー
エコワークス株式会社 小山貴史さんに聞いた
『今、考える住まい、これからの住まい』
新型コロナウイルスの流行によって、大きく変わった、わたしたちの暮らし。
「家」という場所の大切さを改めて感じた方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、創業当時から、「環境建築」分野において、
トップランナーを担い未来に求められる住宅をつくり続けてきた
エコワークス株式会社の小山社長に「今、考える住まい、これからの住まい」
について伺いました。
エコワークス株式会社
代表取締役社長
小山 貴史さん
1964 年熊本県生まれ。京都大学工学部卒業。2004 年にエコハウス専門の注文住宅の設計・施工を行う「エコワークス株式会社」を創業。代表を務める一方で、「一般社団法人 ZEH 推進協議会」元代表理事ほか、経済産業省、国土交通省、環境省の住宅関連各種委員会委員を歴任。著書に「健康・快適な ZEHのつくり方( 監修)」「これからの工務店経営と SDGs( 共著)」などがある。
コロナ禍で変わりつつある住宅の在り方とは?
今年に入り、住宅を求める方に表れた一番大きな変化と言えば、「マンションにするか、戸建てにするか」の選択ではないでしょうか。新型コロナウイルスの流行により、集合住宅での暮らしに不安を感じるようになったり、それぞれのライフスタイルに合った間取りのアレンジが必要になった、ということから、マンションより戸建て、戸建ての中でも間取りの自由度が高い注文住宅を求める方が増えているように思います。また今年は、コロナに加え災害も多かったですよね。その中で、我が家を避難所にできないか、という声も出てきました。
そうした流れから、耐震性の高い建物や太陽光発電の導入などに、より注目が集まっています。 間取りで言えば、長期間のステイホームによって、プライバシー確保の必要性が高まったり、在宅ワーク用の空間が求められるようになりました。特にテレワークの影響で、書斎を求める方は、とても増えました。ただこれまでの書斎とは違い、オンライン会議を想定した防音、書棚や飾り棚、作業に適した窓の設置や照明設計に関してもアドバイスを求められることが増えています。しかし共働きの場合は書斎が1つだと、結局は1人がリビングなどでの仕事を強いられてしまうことに。今後は、コンパクトな子ども部屋に、夫婦それぞれの書斎、そしてLDK、という間取りがスタンダードになってくるのかもしれません。
その他のコロナ対策としては、キーレスエントリー玄関ドアやタッチレス水栓、玄関周りに手洗いを設置したい、というリクエストもよく聞くようになりました。
またもともと家を建てようと考えている方には、「プライベートな時間を充実させたい」という方が多いと思うのですが、今回のステイホームによって、トレーニングルームやシアタールーム、皆で料理を楽しむことができるセンターキッチンを導入してみたい、という声も高まっています。お子さんがいらっしゃる家庭の場合には、当社の大野城モデルハウスで提案しているような、おうちキャンプもできる広いウッドデッキも好評です。家にいながらアウトドアの楽しみを覚え、その後、本格的にハマってしまったという方も増えているようですね。とにかく、これまでは考えられなかった、「空間の多機能化」に前向きなオーナー様が増えていることを実感しています。
すこやかな住環境づくりが、これからますます加速する
家にいる時間が増えたことで、「心地よい室内環境」への関心はより高まりました。先進国の中でも日本は、住環境に置いて後進国。これは戦後に推奨された住宅の粗製濫造や、我慢こそが美徳のように思われてきた風習にも原因があるのですが、健康には何の得もありません。しかし近年WHOから、「年間の最低室温を18℃以上に」という勧告が出されたことも後押しとなり、日本の家づくりも変化していくことでしょう。加えて来年4月からは、省エネ性能の説明義務化の法律が施行され、建築士が施主側に、省エネ性能の説明をすることが必須に。室内環境はよりよくなっていくと期待できます。
ウイルス問題によって、空気の循環についても関心が高まりました。住宅にはすでに、24時間換気設備の設置の義務化がなされていますが、その設備についてのしくみもしっかりお伝えできれと思います。実はいまだに「気密がいい家は換気されない」と勘違いされている方も多いのですが、ストローを想像してみてください。管がきちんと詰まっていると液体はちゃんと吸い上げられますが、穴が空いていると吸い上げられません。家も同じで、気密性がしっかりとした家に、対角線上に排気管と吸気管を設けることで、空気はしっかりと流れていく。これから家を建てる方には、こうしたことも正確にお伝えできればと思います。
家で外気分を味わえる空間づくりにも注目。写真はhit 大野城住宅展示場「エコワークス」モデルハウス
テレワークによってニーズが高まった書斎。これから、欠かせない空間になりそう。
また最近発表された住宅に関するアンケートで、「コロナ後、気になったことは?」という質問に対し、一番多かった回答が光熱費の増大でした。これに対する解決策としては、住宅用太陽光発電の設置が考えられます。しかしこちらにも「なんとなく設置費用の元が取れない」と思われている方が多くいらっしゃいます。なぜなら「なんとなく電気の買取価格が下がっているような気がするし、損しそう」という風潮があるから。
でも実際は、買取価格と同時にパネルの価格も下がっていることを知っていただきたいのです。国は、毎年パネルの実勢価格調査を行い、20年間で年利3.2%の利回りが回るように毎年価格づけをしています。つまり、去年設置しても今年設置しても差が出ないようになっているということ。ただ世の中には「買取価格が下がっている」という情報のみが流れ、間違った解釈がなされがちなのです。住宅用太陽光発電設備は、約10年前後で元が取れるように設計されています。つまり、11年目以降は自家消費する電気は無料とも言え、将来的には大きな経済メリットが見込めます。10年後には、おそらく電気自動車が一般的にもなってくるでしょう。その時のためにも住宅用太陽光発電の導入はぜひ検討していただきたいと思っています。
2020 年からは、モデルハウスを含む全事業所17 ヶ所を、再生可能エネルギー由来の電力にシフト。社用車も順次、EV自動車へ
2015 年に国際サミットで採択された「持続可能な開発目標(SGDs)」にも賛同し、積極的な姿勢を見せるエコワークス。博多区に新しくオープンしたショールーム
には、「持続可能な住まいづくり」への取り組みがわかりやすく展示されている
これから家づくりを考える方に、伝えておきたい3つのこと
まず、これから家を建てようと考えている方は、ぜひ家について勉強してみてください。服や車を購入する時、皆さんはその質やデザインについて、様々な経験や情報をもとに良し悪しを判断していると思います。でもその10倍、100倍の買い物である家についてはなぜか、「スタッフさんがいい人だから決めました」「プロにお任せします」という方が多いのです。もちろん、頼っていただくのは非常に嬉しいことですが、果たして本当に良いのでしょうか。そんな中、コロナ以降、「建築ユーチューバー」と呼ばれる方々が増え、一般の方が住宅の性能について学べる場が一気に増えました。中には、国の施策に関わるような先生方が、その情報をダイレクトに提供してくれているものもあり、とても有意義です。ぜひこうしたユーチューブなどで学び、自身の未来を充実させられる住まいづくりに向き合っていただけたらと思っています。
二つ目に大切なのは、これから建てようとしている住まいが、子や孫の次の世代にも住み継がれるもの、という意識を持って欲しいということです。車なら数年ごとに性能の良いものに乗り換えることができますが、家はそういうわけにはいきません。省エネシステムの導入で最初こそ200万円余分にかかったとしても、50年後はどうでしょう。そういったことまで頭に入れて家を建てていただきたいのです。未来にバトンタッチする方法を考えて家を建てる。それが私たちの責任なのではないかと思います。
「これからは、既成概念に囚われない自由な家づくりがますます加速していくと思います」と小山社長。主役は、建てる人自身だ
そして3つ目は、設計士に夢をどんどん語って欲しいということです。どんな暮らし方をしたいのかを、設計士にどんどん話していただくことで、設計士もこれまでの経験からアイデアを出し、様々なニーズに応えていくことができます。結果、双方にとって幸せな家づくりが可能になるのではないかと思います。
「新しい生活様式」が求められるようになった2020年。戸惑うこともたくさんありましたが、未来のより良い暮らしについて考えるきっかけを得られたことは、非常に大きなメリットだったと思います。当社も引き続き、「住まいづくりを通して世の中の役に立つ」、という普遍的な考えのもと、新しい時代に求められる住まいづくりを進めていきたいと考えています。
「エコワークス」のYouTubeチャンネルもスタート。小山社長自らが、様々な分野の第一人者と対談する「先生に聞く『住まいの未来』シリーズ」が好評。「ほか他社になりますが、ラクジュ本橋さんや、建築家集団 松尾設計室さんのYouTubeもおすすめ」と小山社長
エコワークス YouTube公式チャンネル
「未来基準の高性能住宅」 エコワークス
https://www.youtube.com/channel/UCxCQI2WyZFwbQZ67aF14oTQ
取材協力 / 『エコワークス 株式会社』
福岡市博多区竹丘町1-5-38 0120-370-910 https://www.eco-works.jp