使えば使うほどに味が出るブラックスレートの床材と木の天井のコントラストが絶妙
地元の人々に愛される
健やかな空間が完成！
tōn
トオン
（太宰府市）
太宰府に縁がある人に末永く根ざして欲しいと、
計画段階からテナントが入り建物や空間をつくる、
新しいスタイルの施設が誕生しました。
気候が良い日は窓を全開にしてオープンテラスに！ 隣接するベーカリーのパンを購入して食べられる（要ドリンクオーダー）など、施設内の各店舗との繋がりも持っている
全国的にも珍しいコーポラティブ施設
チーズケーキのテイクアウトも可能。厨房は広さを確保し機能的な動線になっている。
コロナ禍も収束に向かい、徐々に賑わいが戻ってきた太宰府エリア。天満宮へ向かう参道周辺には新しいお店が次々にオープンしているが、なかでも、2023年2月にグランドオープンを迎えたコーポラティブ施設「NISHIKIMACHI」は、建築の着工前にテナントを確定し、施主とテナントなどがみんなで考えながら場をつくるという新しい試みで注目を集める。
全体のプロデュースを担当したのは、家具のスタイリングや商品プロデュース、空間づくり、イベント企画などを手掛ける「Acht」代表の田中敏憲さん。建築家やテナントのリーシング、各店舗のデザインディレクションなどを担当した。「コトの始まりは、このまちに必要とされる施設をつくりたいという漠然としたものでした。そこで、以前から親交があった太宰府天満宮の方や大宰府出身の知人たちに、どんな施設があったら嬉しいかをヒアリングし、地元の人々が喜ぶテナントを誘致しようと考えたのです」と田中さんは振り返る。そんな田中さんが建築設計を依頼したのが、福岡のまちをよく知り、公共的な施設などにも携わってきたリズムデザイン代表の井手健一郎さんだった。
全体のプロデュースを担当した田中さん（左）と橋口さん（右）
石や雲のように見える照明をセレクト
「太宰府は観光客がたくさん集まってくるけれど、ビルディングが建つ都市ではありません。都市ではないことの価値として「郊外的」「低密度」「分棟」をキーワードに、日当たりなど、隣接する施設への影響を極力抑えた設計を行ないました」と、井手さんは言う。
今回、地域住民のニーズが高かったベーカリー、カフェレストラン、寿司店の３店舗を誘致。その１つが、福岡県内で「TAG STÅ」など５店舗を展開する橋口靖弘さんの最新店『tōn』である。
「橋口さんは福岡のまちの先輩で、その先輩の新しい場に携われることは光栄でした。早い段階で店名を決めてもらえたのもイメージがわきやすかったですね。『tōn』は「NISHIKIMACHI」を象徴する空間。その価値を体現することを意識してデザインを決めていきました」と、井手さん。
田中さん、井手さん、橋口さんは、10年以上の付き合いがあり、これまでどのようなコトをしてきたのか、どのようなモノが好きなのかといったことが、感覚的に通じる関係性があったからこそ、スムーズに物ごとが進んだと３人は口を揃える。
自然光が降り注ぎ、風を感じる心地よい空間は、この店を訪れるゲストはもちろん、スタッフのテンションをも高めてくれる。
Designer Profile
株式会社リズムデザイン
代表取締役
井手 健一郎さん
1978年福岡生まれ。2000年に福岡大学工学部建築
学科を卒業後、渡欧し14 カ国を訪れる。帰国後、2004年に
リズムデザインを設立（2016 年に改組し法人化）。
『その場所だからこそ実現できる場づくり』を目指した設計
を行なっている。代表的な設計プロジェクトは「大濠テラ
ス 八女茶と日本庭園と」（2020 年）や、水上公園の
「シップスガーデン」（2016 年）など。
ホテルのエントランスのような空気感となる床材を採用。
微妙に方向を変えながら、絶妙なバランスで吊るされた照明。
建物の中心にある120mm 角の柱の角を9mmカットして全体のやわらかな質感に合わせた
tōn [トオン]
太宰府市宰府2-7-5 NISHIKIMACHI内
電：なし（問合せ・予約はInstagramへ）
営：9:00～18:00（ランチ11:30～15:00）
休：不定
P：なし
カード／可
QRコード決済／可
Instagram: @ton_tagsta
店舗設計から学ぶ家づくり
センスの良い飲食店やショップがあちらこちらに点在する福岡のまち。
それらの空間には、店主の想いがたくさん詰め込まれています。
今回は、福岡に縁のある建築家やインテリアデザイナーの最新作を訪れ、
家づくりのヒントとなるお話を聞きました。
01｜casime gastropub カシメ・ガストロパブ（福岡市・赤坂）
02｜Sphere Fukuoka スフィア・フクオカ（福岡市・薬院）
03｜tōn トオン（太宰府市）