夜はお酒やぬか漬けなどを提供するバーとしても営業。温かな灯りに惹かれ、思わず覗いてしまう
自宅に招かれたような
居心地の良い空間
Sphere Fukuoka
スフィア・フクオカ
(福岡市・薬院)
長年の友人から依頼されたのはオーガニックコスメ
のショールームであり、身体の内側からキレイになれ
るカフェやバーとしての空間づくり。店主の自宅に
招かれるようなアットホームな空間が完成しました。
白やグレーをベースとしたシンプルな空間。調理場でありお客様をもてなすカウンターでもある
石鹸の泡をイメージしたシンプルな空間
洗面台とカウンターの間には磨りガラスの仕切りがあるが、全て防がないことで広く見せている。
「住宅と店舗はアプローチが全く違うんですよ」と話すのは、福岡と東京を拠点に全国各地の商業空間デザインや住空間設計、生活に携わる各種プロダクトの商品開発などを手掛けてきた高須学さん。
「建築家やデザイナーに住宅設計を依頼する人は、その建築家が建てた家に住みたいという想いを抱いている人。即ち、建築家と依頼者は1対1で、依頼者が気に入れば成立します。一方、店舗の場合は店舗のオーナー、デザイナー、エンドユーザーの三者がいて成り立つもの。オーナーの想いが強ければ強いほど、それに寄りすぎてしまうと店舗としての魅力がなくなってしまうし、エンドユーザーを意識しすぎてしまってもブレてしまうんですよね。私たちデザイナーは、いちばんいい塩梅にバランスを取ることを意識して空間をつくっていきます」。
今回の依頼者であるオーナーの井田実穂子さんは、長年の友人で、井田さんが手掛けるオーガニックコスメブランド『Sphere』のショールームであり、身体の内側からもきれいになってほしいとの想いから、甘酒やぬか漬け、発酵鍋(要予約)などを楽しむカフェやバーとしても利用できる空間を作りたかったという。
「ここの場合は住宅のアプローチに近かったかもしれません。というのも、ここは井田さんという存在があってこそ成立する場所で、彼女がセレクトしたアイテムや空間を好きな人が集まってくる、ちょっとプライベート感のある場所。不特定多数を対象とする一般的な店舗とは異なりますから」。
日中はオーガニックコスメブランドの陳列台としても利用。
テーブル席のテーブル、照明も高須さんの作品
『Sphere』では自然の海塩を使用した石鹸や歯磨き粉、シャンプーなどを展開しており、商品は白、パッケージはシルバーで構成されている。そのため、高須さんはこの空間にあまり色を入れたくなかったという。「石鹸の泡をイメージして、泡のような清潔なカタマリ感のある空間を意識しました。自宅のキッチンにゲストを招くような、アットホームな立ち位置にとどめておきたかったんです」と高須さん。井田さんの「石鹸がシンプルなアイテムだから、お店もシンプルな空間にしたいと考えていた」という要望を叶えつつ、初めて訪れた人もホッとくつろげる空間が完成した。中央のカウンターはモルタル製で既製品の厨房器具などは殆ど取り入れず、シンクやコンロも家庭用を設置。石鹸の使い心地を体験できるように設けた洗面所もキッチン同様モルタル製で、空間に一体感が生まれている。8坪ながら狭さを感じないのは可能な限り仕切りをなくしているから。これらの工夫は住宅にも応用できるというから、ぜひ参考にしてほしい。
Designer Profile
TGDA(Takasu Gaku Design and Associates )
インテリア・プロダクトデザイナー
高須 学さん
1974年福岡生まれ。九州芸術工科大学工業設計学科を
卒業後、一級建築士事務所に入社し、2002 年に独立。
チーズタルト専門店「BAKE CHEESE TART」や、西鉄グ
ランドホテルの客室や松風「月の間」など、商業空間や住
空間設計のほか、生活に携わる各種プロダクトの商品開発、
デザイン開発を手掛ける。https://www.gaku-design.com
円形のミラーは、円形に銀を残した「銀引き」という特殊な加工をほどこし製作した特殊な商品。
ステンドガラスを利用したペンダントライトも高須さんの作品だ。
壁側にも商品の陳列棚が設けられており、8 坪という空間を最大限に活用している
Sphere Fukuoka [スフィア]
福岡市中央区白金1-4-18 サンコービル111
電:なし(問合せ・予約はInstagram「@sphere_fukuoka」より)
営:14:00~22:00頃
休:不定
P:なし
カード/可
QRコード決済/可
https://soratochi.jp/top/
Instagram: @sphere_fukuoka
店舗設計から学ぶ家づくり
センスの良い飲食店やショップがあちらこちらに点在する福岡のまち。
それらの空間には、店主の想いがたくさん詰め込まれています。
今回は、福岡に縁のある建築家やインテリアデザイナーの最新作を訪れ、
家づくりのヒントとなるお話を聞きました。
01|casime gastropub カシメ・ガストロパブ(福岡市・赤坂)
02|Sphere Fukuoka スフィア・フクオカ(福岡市・薬院)
03|tōn トオン(太宰府市)