【LIFE STYLE in FUKUOKA 福岡の暮らし。#5】心地よい暮らしをカタチに。

今から16年前、築25年のマンションを購入。
ライフスタイルの変化に応じて
これまでに3回のリノベーションを行ないました。

20代の頃から映画が大好き。輸入インテリア雑貨店やセレクトショップで働いていた泉さん。ご主人もインテリアショップで働いており、どんな暮らしをしたいかという明確なビジョンを持っていた。
「当時は警固に住んでいて、車を持たずに生活できるエリアで物件を探しました。もう16年以上前の話ですね。不動産会社を通じていろんな中古物件を見せていただいたんですけど、実はここ、不動産会社の担当の方からは『たぶん気に入らないと思いますよ』と言われた物件だったんです。けれど、実際に見てみると、少し手を加えれば大丈夫、アイデア次第で思い描いていた暮らしができるというイメージが湧きました」と、泉さんは当時を振り返る。
イメージしていたのは、パリのアパルトマンや、ニューヨークのロフトのような空間。このリノベーションを監修したのは、旧知の仲で泉夫妻の好みを知り尽くした有吉祐人さん(Spumoni/design studio)だ。ヨーロッパのあの建物のこんな感じ、あの本に載っていたあの感じといった具合に、わざわざ説明しなくても共通言語としてイメージを共有でき、感覚的に理解し合えたことで、イメージ通りのリノベーションを実現できたという。しかし、数年後、ご主人の転勤により関西で暮らすことになり、この部屋を離れることになった。

パリのアパルトマンをイメージしたリビング。マンションの一室のため本物は叶わなかったが、煉瓦造りの暖炉のようにしたかったという壁面棚

ライフスタイルの変化に合わせて
臨機応変にリノベーションを実施

中古物件を購入したとき、自宅の一室に[PATINA]をオープンするとき、子ども部屋が必要になったとき。必要に応じてリノベーションを行なってきた泉さん。少しずつ手を加えながら、心地よい暮らしをカタチにしていく。

賃貸にしてしまうと、福岡に戻ってくることになったときに、すぐに退去して欲しいと言えないため、関西で暮らす間はご主人の弟さんに住んでもらっていたそう。一方、関西で暮らし始めた泉さんは、休日になると近隣のクラフトギャラリーなどを巡るようになったそう。「福岡ではなかなか出会えない作家さんにお会いしたり、そんな作家さんの作品に触れたりしていくうちに、作家さんや作品を福岡で紹介したいと考えるようになりました」。
関西から福岡に戻ることが決まり、自宅の一室でそれらの作品を展示・販売する[PATINA]をオープンさせることになった。このことをきっかけに、二度目のリノベーションをすることに。玄関から入ってすぐの部屋に展示するための棚を設けたり、結露のために痛んでいた寝室の壁を作り直したりしたという。[PATINA]が自宅の一室から薬院の店舗へ移って約10年。昨年9月には子ども部屋を設けたり、リビングの壁を塗ったりという三度目のリノベーションを実施した。ライフスタイルの変化や経年変化に応じて、少しずつ手を加えている。

「年齢を重ねていくと、心地いいコトも変わっていきますよね。環境も変わりますし、体調も変化していきます。それに合わせて環境を整えたり、食べるものも考えたりするようになりました。心地よく過ごすことを考えたとき、家の存在はとても大きいですよね。少し値段が高くても、使い心地のいいもの、着心地のいいものを使いたいですし、お店に置いてあるものも、そのような視点でセレクトしています」と、泉さん。一時期この家を離れていたものの、初めてこの家に暮らしてから16年の年月が過ぎた。椅子や壁に飾る写真やオブジェなど、必然的にモノは増えたというが、ご夫妻の好きなモノが共通していることもあり、モノの多さを感じさせない調和の取れた空間になっている。
「次は水回りも変えたいですね。とはいえ、お金もかかりますから、もう少し先になると思いますが」。ライフスタイルの変化や資金と相談しながら、これからも心地よい暮らしを実現していく。

向かって左側の棚には好きなモノが並べられており、さながらギャラリーのような雰囲気

使い込むほどに味わい深い
経年変化を楽しむアイテムを提案

インテリアショップやリノベーション会社のオフィスが入居するビルの一室に佇む[PATINA]。自宅の一室から移転して10年目を迎える泉さんに、この10年の変化やこれからの展望について、話を聞いた。

関西で暮らしていた頃に出会った作家さんや作品の数々。福岡にはまだ入ってきていないモノも多く、福岡の人々に紹介したいという想いで、泉さんは自宅の一室にギャラリーショップ[PATINA]をオープンさせた。「子育て真っ只中でしたので、自宅の一室(アポイント制)でスタートさせてみました。けれど、想像以上に大変でしたね。店舗を設けたいと思い始めた頃、現在の場所をご紹介いただき、店舗を構えることにしました」。
店名の[PATINA]とは、ラテン語で“経年変化の味わい”という意味があり、使い込むほどに味わい深くなる、長く大切に使い続けたいアイテムを、新旧、国内外問わずセレクトしている。
店舗を構えて10年目。現在は中学生のお嬢さんも、オープンしてすぐの頃は保育園に通っていたそう。当時からお店にいることも多く、最近も初期の頃から来られているお客様から「大きくなりましたね」と言われることもあったとか。「普段は物静かな娘ですが、時々、お客様にご挨拶をしているのを見ると、彼女の成長も感じられて嬉しいんですよ」と、目を細める泉さん。この10年で、自身にも変化があったそうで、以前は「頑張らなくちゃ」という気持ちが強く、無理していたところもあったが、現在は自分のためにも、家族のためにも健康でいることを大切に考え、無理をしなくなったという。
「一人でしていますし、自分が楽しくなかったら続けていくことはできません。10年目に入って、ここまで続けてこられたことが我ながら凄いなと思いますし、これからもできるだけ長く続けたいという気持ちがあるので、頑張り過ぎず、肩の力を抜いて、自分のペースでやっていけたらいいなと思っています」。
住まいも店舗も、年月が経つことによる変化を自然に受け入れ、住まい方、働き方を柔軟に変化させてきた泉さん。その暮らしは、まさに[PATINA](=経年変化の味わい)を楽しんでいるといえる。
[PATINA]を訪れれば、そんな心地よい暮らしのヒントに出合えるかもしれない。