ひとつ屋根の下、それぞれの暮らし。

真っ白なカンバスのようでもあり、複雑なパズルにも似ている―。
冬の澄んだ空気のなかで出会ったのは、そんな不思議な家だった。
ひとつ屋根の下に、家族構成もライフスタイルも異なる三世帯の暮らし。
親世帯と子世帯、それぞれが緩やかにつながり、ともに生きる。
これからの家族の理想をカタチにした、
新しい住空間に魅せられて。

変則的なスキップフロアが伸びやかな空間を生み出す。(sideA)

2階建ての4LDKに加え、中2階とロフトを備えたH邸sideAに暮らすのは、長男夫妻と3人の子どもたち。モノトーンで統一されたモダンな室内、ひときわ目を惹くのはLDK全体を見渡せるスキップフロアだ。「視線が抜けて広く感じられるでしょう? 私のワークスペースとしてフル活用中です」と嬉しそうな奥さま。一方、デザインと機能性を両立したスタイリッシュなコーディネートには、ご主人のセンスが最大限に活かされている。
スキップフロアにロフト、デッドスペースを生かしたウォークインクローゼットと、隙のない空間構成が光るH邸。固定概念に囚われない間取りと視覚効果を巧みに利用したスタイリングは、穏やかな心地よさとドラマチックな非日常感を兼ね備え、毎日に癒やしと刺激を与え続けてくれる。

住まい手の哲学すら感じるホテルライクな上質空間。(sideB)

リビングの扉を開けると、静物画のように美しい空間が広がっていた。1階部分はインナーガレージ、階段を上がった2階部分に住空間が広がるH邸sideBは、次男夫妻と愛犬が暮らすワンフロアの3LDKだ。ときに夫妻の仕事場に変わり、あまりの快適さにソファで眠ってしまうこともあるというLDKが纏うのは、白からシルバー、チャコールへと、ほんの少しずつニュアンスを変えるグレーカラー。カラーコーディネーターの資格を持つ奥さまがこだわり抜き、ふたりが本当に寛げるものだけを揃えたのだとか。窓辺に広がる景色がミニマム1匹の暮らしを優しく見守っていた。

コンパクトな動線と暮らしやすさを最重視。(sideC)

ソファに並び、50インチのモニターで映画を観るのが至福の時間。「隣で暮らす孫が遊びにくるのも楽しみ」と笑顔が浮かぶ

親世帯が暮らすH邸sideCは、平屋のようにコンパクトな動線と暮らしやすさを追求した間取りが特徴だ。「ふたりで生活するのに過不足のない、大きすぎない家がいいと思っていました」と語る奥さま。キッチンを起点とした動線は、家中どこへ移動するにもアクセスがよく、家事の手間も大幅に短縮されたのだとか。またLDKの一画には段上げの和室が設けられ、ホッと落ち着く空間が広がっている。「先祖から受け継いだ土地で、今の私たちにちょうどいい暮らしができる。改めて幸せを感じています」。微笑む奥さまの背後に川面のきらめきが映り込み、柔らかな光が踊っていた。

ちょうどいい距離感、新しい家族の住まい。

全世帯に共通するキーワードは「川沿いの景観を楽しめる家」。大きく切り取られた窓から、四季折々の表情を感じられる

三世帯を順番に巡らせてもらった今回の取材。最後に親世帯でお話を伺っていると、次男の奥さまが湯気の立つ珈琲を届けてくれた。彼女の明るい笑顔が、互いにとって快適な距離感と関係性を何よりも雄弁に物語る。

以前からこの土地で二世帯暮らしをしていたHさん夫妻と次男夫妻。地震をキッカケに建て替えを検討、長男一家を迎えることにしたのだが、以前は二世帯で使っていた限られた土地、地型は台形に近い変形。家族構成もライフスタイルもまったく違う三世帯。「この難題を解決するには、かなりの経験とスキルが必要だと思って。仕事を通じて既に信頼関係を築けていた[SHIN空間研究所]なら、と頼らせてもらいました」。

まるでパズルのように入り組んだH邸。各家庭の要望を汲み取り全員が望むプランに落とし込むのは至難の業だったが、店舗設計や狭小住宅を得意とする同社は、世代も世帯も異なるそれぞれの満足を引き出すことに大成功。同じように「大好きな川沿いの景色を楽しめて嬉しいです」と語る顔は、家族ならではの温かな絆で結ばれていた。