和のしつらえを慈しみ
ひらき、つながる暮らし

家族に親族、近隣の人々。誰もが立ち寄りたくなる平屋の家。 シンボルツリーとウッドデッキを囲むオープンな構造は 住まい手の大らかな心を、そのまま映し出しているかのよう。

人が自然と集まる 大きな器を持った家

のびやかに広がる八代平野に、凛と佇む切妻屋根の家。今回の取材先であるMさん一家の住まいは、古きよき日本家屋を思わせる平屋だ。土間の廊下、本物ならではの感触が伝わる浮造り(うづくり)仕上げの無垢の床。思い切った余白が開放感を、床と天井の高さを変えたフリースペースが落ち着きをもたらす。建築雑誌から抜け出してきたような家に思わずため息をついていると「あ、来た来た」と奥さまが小さく右手を振った。見上げた先には、南西側に大きくひらけた窓とウッドデッキ。その先に、この家を手がけた[宮崎建築]の社長夫妻の姿が近づいてくる。実は奥さま、宮崎社長の実妹でもあり、この家は同社の建築哲学を忠実に再現した最高傑作でもあるのだ。「兄夫婦はもちろん、近所の方や母の友人まで、本当にしょっちゅう人が集まる家です。野菜はいらんね、とか今年の梅干しはもう漬けた? とか。みんな玄関じゃなくて、この窓側のドアから入ってくるんですよ」と可笑しそうに奥さまは笑う。

質感にこだわる素材選びと 緩急自在の空間構成

大工としてキャリアをスタートし、木の魅力と性質を知り尽くした夫。大手ゼネコンで経験を積んだ一級建築士の妻。[宮崎建築]の家づくりは、この強力なタッグから生まれる。「施工監理は社長、プランニングは私。ふたりとも熱意が有り余っているから、お互いの領域まで踏み込むことも多いです。打ち合わせ中に白熱しすぎて、お客様になだめられることも(笑)」と設計担当のテルミさん。真摯な家づくりへの姿勢は、M邸の随所に見て取れる。「家の内壁は質感がいい漆喰の下地材で仕上げました。天然の木と組み合わさると、風合いが引き立つでしょう。キッチンに立ったときパッと広がる視界も重視しましたね」と社長。行き止まりをつくらず自由に回遊できる動線は、テルミさんと奥さまのアイデアを掛け合わせたものだ。そして、どこもかしこも絵になるM邸で、ひときわ目を奪われる特大の開口部も。「とにかくオープンな家にしたかった」というMさん夫妻。今年10月、新居を構えて4年目にして誕生した長女Iちゃんの存在も、M邸に立ち寄らずにいられない要因のひとつとなっている。

ご主人の仕事場として活用しているロフト。カウンター上の座卓の上部は開放し、階下の様子が伝わるように
アイランドキッチンから玄関ホールまで、一直線に視界が広がるように。ゲストや家族との対話を楽しみながらの家事時間は、自然と笑顔が浮かぶものになりそう

世界にたったひとつ 心からくつろげる場所を

生まれたばかりの小さな命を守るのは、家族の愛情と頑健な家にほかならない。吹き抜け風の大空間を誇るM邸だが、空調は小型エアコンがひとつきり。「断熱材は高品質な吹き付けです。冬は温かく、夏は涼しく」と語る社長の視線は、無垢材を惜しげもなく使った軒を捉える。「大きく張り出した軒も、この土地の自然環境に合わせたもの。最新の技術と古来から脈々と続く和風建築の知恵、いいところ取りがうちの信条」と大きく頷いた。家族の毎日に寄り添う設計と、自社で一貫して行うからこそ、すみずみまで行き届いた施工。ともに欠かせない同社の両輪だ。「兄夫婦に感謝しているのは、家が芯からリラックスできる場所になったこと」と微笑む奥さまの言葉は〝ここにいるだけで癒やされる、やすらぐと思える居場所をつくりたい〟という同社の家づくりを端的に表している。母の腕に抱かれ、おっとりと天井を見つめるIちゃんは、きっとこの家でたくさんの愛に触れながら、健やかに成長していくのだろう。

この建築を手がけた会社

  • M-style 株式会社 宮﨑建築
  • 〒866-0875  熊本県八代市横手新町18-1
  • 0965-35-7750
  • http://mstyle618.com