古さと新しさ、西洋と東洋が混在する
アンバランス・バランスの美

● 古民家をショップ兼飲食店に ● 存在感のあるカウンター ● ゆったりくつろげるテーブル席 ● ナポリ製の石窯コーナーも

築40年の古民家を
魅力的なショップに

墨を練り込んだモルタルのカウンター。後ろに張ったタイルはイタリア製で1つひとつ形や表情が異なる。イタリアから遊びにいらした義理のお兄さまと一緒に張った、思い出深い壁

福津市の繁華街からも遠く離れた山里に、古民家をリノベーションしたショップ兼レストラン&カフェがある。ここは福津市で西欧野菜の栽培を行う『テヌータカンピフレグレイ農園』のオーナー シルビオ・カラナンテさんと妻の花田愛さんが開いた店だ。
もとは築約40年の民家。シルビオさんと愛さんは[長崎材木店]の不動産部門をとおしてこの物件を購入し、リノベーション部門の一級建築士・八川一郎さんに設計プランを依頼した。
純和風だった建物は構造がシンプルで、リノベーションにも適した物件だった。天井や床を取り除き、傷んでいた瓦を葺き替え、あとは構造上必要な柱や梁を残して解体した。「屋内を仕切るものがほとんど何もなくなった建物を、どうリデザインしようか」。シルビオさん夫妻と八川さんによる、空間の再構築がスタートした。

何度も意見をぶつけ合い
妥協のない空間を追求

空間の構成要素は大きくわけて4つ。1つ目は採れたての野菜や手作りのパンを販売するショップ。2つ目は何人ものスタッフが気持ちよく働ける広い厨房。3つ目はピザを焼く大きな石窯。そして4つ目がお茶や料理、ワインを楽しむカフェ&レストランの飲食スペース。これらの要素をかっちりと仕切るのではなく、ゆるやかに一体感を持たせながらゾーニングしていくにはどうすればいいか。シルビオさんと八川さんは何度も打合せを重ね、時には熱く意見をぶつけ合いながらプランを熟考した。
「私のこうしたいというイメージを八川さんは時間をかけてヒアリングし、さらに深い意図まで汲み取ってくれました」とシルビオさん。これを受けて「シルビオさんは野菜づくりでも妥協のない仕事を追求してこられた方。店づくりでも常に〝本物〟を求められました。その気持ちに応えたかった」と八川さん。両者の店づくりの情熱が実を結び、ショップ『A・PUTEC(アプテカ)』とカフェ&レストラン『FLEGO(フレーゴ)』が完成した。

気候が良くなったら窓を開け放ち、テラスでも食事を楽しめるように

アンバランスなもので
バランスを取るという発想

ショップ『アプテカ』全景。イタリアや地元・福津市の加工品や手作り雑貨も並ぶ。厨房との間を仕切るガラスにはその日のメニューを書いて、楽しい雰囲気を演出

平屋建ての住居から、複数の機能を併せ持つ店舗へと生まれ変わった古民家。エントランスを入って正面は墨を練り込んだモルタルのカウンター。バックに張られた陶器のタイルはイタリアから取り寄せたものだそうだ。
このカウンターに向かって左側がショップ『アプテカ』。ガラス越しに広い厨房の様子が見て取れる。厨房のステンレスの什器も一部をモルタルで覆い、単調になりがちな厨房の表情に変化をつけている。
そしてカウンター右側に広がるのがカフェ&レストラン『フレーゴ』の飲食スペース。思わず見上げるほどの高い天井に行き交う太い梁…古民家ならではのどっしりとした構造に見惚れるだろう。
さらに、奥にはナポリから取り寄せたピザ用の石窯が。表面を覆うゴールドのタイルに合わせ、石窯周辺の壁は落ち着きのある赤で塗装されている。
感心するのは空間を見渡した時に感じる、絶妙なバランス感覚だ。「私が手がけるリノベーションは、アンバランスなものでバランスを取る─つまり、アンバランス・バランスを重視しています」と八川さんが話すとおり、確かに日本と西欧、それぞれの古民家の持ち味や、現代のモダンな感性と時代を経てきたものの魅力…さまざまな異なる要素が見事に調和している。これぞ、リノベーションだから実現できる空間表現であり、[長崎材木店]が手がけるリノベーションの真骨頂だ。

歳月を経て味わいを増した柱や梁をすべて見せるカフェ&レストラン『フレーゴ』。テーブル席のほか、スタッフと話をしながら食事を楽しめるカウンター席も設けられている

この建築を手がけた会社